包丁談義3

包丁研ぎで社会が見えてくる

研ぎ忠 岡田忠志 包丁談義

100円でも1万円でも研いだ瞬間は切れるんですよ。
ただその食材に、硬い食材に使って曲がるとか、へたれるとか、そういうのはまた別の問題であってね。
切れるのは切れる。

角度を出してやれば、切れなくはないんだよね。

よく知らない人はこういう風に研ぎ直して角度を出すのに、こういった擦過痕っていうか、擦った跡が付くのを嫌がる人がいるんじゃないかと思うんですよ。

包丁研ぎ:擦過痕

あー、それは砥石に当たってしまうからしょうがないんですよ。

実用的な包丁にするには必要な工程というわけなんですよね 。

そうそうそう。
だからこれも結局、同じでしょ。
擦過痕がこう出てるでしょ。

仕上げの工程で最終的には先端だけ研ぎ上げるからあれだけど、多少これ残るんですよ。
ただ、先端だけ研いでっていう方法もあるし。

だけど本当によく切るには(本研ぎで)研がないと切れないんですよね。

やっぱり美術品と間違えてもらっては困るということですよね 。

あーそれは実用品ですから、これは。
そこらに棚に飾っておく刃物ではないわけだから。

どんどん使って、いわゆる「常用の美」ですよ。

普段使いでどんどん使っていくっていう「常用」っていう言葉があるんだけど、その「常用の美」ですよ。

使って何回も研いでいくと、これが全体に広がっていって擦過痕がなくなるわけですね。

そうそうそうそう。
それはまだ研ぎ始めだからそういう感じなんだけれども 。

そういうことをお客さんにも分かってほしいですよね。
100均の包丁でいいやって思っている人にも。

ああ。百均の包丁でいいやって思ってる人は、それは、価値観だから。
価値観は治らないから。

だって100均でも実際切れるんだもの 。
切れるんだったら百均で買ってきて使えばいいんだもの 。

研ぎ代を出して、それでもやってもらった方が良いと思えれば、そこでお客さんは転換するわけだよね。

1万円の包丁買うんだったら100本買えるって事ですもんね。

100本の廃棄された包丁

100円の包丁を100本、新しいのが買えるわけだけれども、
じゃ、使わなくなった100本のその包丁は一体どうなっちゃうの?
って聞きたいわけ。

使えば物としての価値があるのに、使わないで廃棄するわけでしょ。

だけど、100均で買ってきて、使わなくなって廃棄した包丁の価値っていうのは何だったのかな。
っていうふうに思うわけ。

便利のためにこの世で生産されて、便利のために廃棄されるわけでしょ。
100均で買ってきても、ある意味使う刃物としての存在がそこにあるわけよ。

で、そこらがね、本当にね、あの何なんだろうって、その価値が何なんだろうって思うとこなんだよね。

一つの物を大事に使って行った方が愛着もでるし、その物の値打ちも上がるし、っていうふうに思うんだけどね。



100本の廃棄された包丁

その穴あき包丁なんて不経済だと思わない?
結局、その穴から先だけ焼入れをしてるわけでしょ。
で、穴のところまでいったら、今度使えないわけじゃない。

終わりでしょ。
終わりって事は、こっからこっち、例えばこの辺まで普通の包丁ってね、この辺まで焼き入れするんですよ。

だけど、この包丁自体はこの先端のここだけしか焼入れをしてないわけ。
こっからこっち研いでも使えないわけ。
意味ないわけ。

これは食材がくっ付かないために穴を開けてる。
ただこう飾りじゃなくてね。
それは理屈はわかるんだけど、そうするとここまで研いで、こっから先は使えないっていうすごい不経済っていうか。

一回こっきりでさっきから言ってるように価値観なんですよ。
100均でもいいやっていう人もいれば、長く大事に使ったほうがいいって思う人もいるわけ。
価値観までこっちが強制できないわけでしょ 。

例え話でね 「じゃあ俺も使い捨てじゃないかな。」世の中の社会構造的に考えたら。
そう。そんなもんですよ。

で、今みたいなデフレ経済の中で本当に包丁研ぎがどれだけ必要なのかって言うのがね。
これやらなきゃ、どうしても切れないってわけじゃない。
切れなくてもそれなりに切れればいいやって言う人もいるわけ。

本当にその人なりの価値観に任せるよりないんですよ。
それは強制できないことだし。

そう。だから極端に言うと包丁研ぎで社会が見えてくるっていうかさ。
やってることは包丁研ぎなんだけど、それを通じて何がしたいか、していったらいいか、というのが分かってくるんですよ。

へへ。何の仕事でも同じなんだけども、やっぱりやってくとね、いろんなことが見えてくると思いますよ。




毎日使って使い飽きない研ぎ方

研ぎ忠 岡田忠志 包丁談義

まーなんでもそうだけど、奥が深いですよ。
本当にやればやるほどね、いろんなことが見えてきてね。

で、一番最初、刃物研ぎをやり始めた頃は、とにかく切れればお客さんは満足するんだと思っていたんだけれども、そうじゃないんだよね。

そうじゃなくて、研いで渡した後に実際に次に切れなくなるまで、毎日その家で(その包丁が)活躍してるわけでしょ。

そうすると、最終的にはそのお客さんが毎日使って使い飽きないような角度の刃の研ぎ方っていうか、そういうのをやっていくっていうことを考えていかないと本当の、本当の切れ味じゃないんじゃないかな。って最近思うようになってきたんだけど。

持ってきた状態で、ある程度このお客さんはこういう使い方をするのかなっていうのは分かるんですか ?

それは分かる。
一番ひどいなと思うのは包丁に食材がくっついたまま持ってくる人がいるんだけど、それはね、本当に止めて欲しいんだよね。
やっぱりね。状態がいつも綺麗にして仕舞ってるっていう状態じゃないっていうことが一目瞭然なわけだよね。

あと包丁の柄が割れちゃう人。
こっから水が入って錆びて、ここがパカって開いちゃうんですよ。
割れちゃうんですよ実際に。

で、それで割れるだけだったらいいんだけども、割れる状態になるまでには中の金属が腐食してボロボロになっているわけでしょ。
それでも使ってるわけ。

で、それ使えなくはないんだけれども、やっぱり良い状態で形がなくなるまで使うには、適正な使い方してもらわないとなっていう気持ちはあるよね。

だから使い終わったら、お湯で汚れをきれいに洗い流して、布で乾拭きをして包丁差しに下を向けて差してあげる。
それだけの単純なことでサビが廻って割れる、っていうことを防げるわけだから。

「いや、私はそんなことをしていない」って言う人がいるけど、やってるんだったらこういうことには絶対なりえない。

いくら上品な人でも言っちゃなんですけど、お化粧して顔の綺麗な人でも性格がわかるよ。包丁見れば。
こういう人はどういう使い方をしているかとか。
言わないけどね、それは。




元がなくなると指切ったりして危ない

研ぎ忠 岡田忠志 包丁談義

ここの元の部分を残してやらないと、この元がなくなると握っている時に指ぃシュッと切ったりするんで危ないんで、なるたけこういう風にこういう風に研いでいってやる。
そうすると極端な話すると、こういう状態でも使えるわけなんだよね。

必ずしも相似形に研いでいくというわけではないんですね。違う包丁になるんですね。最後は。

違う包丁っていうか、少しずつここを元の部分を残して先を研いでいってあげた方が、その包丁を最後まで使えるんですよ。
で、平均に研いでいくと、平均にこういう形にどんどん無くなると、ここが無くなって危ないんですよ。

指がこうシュッと出て、切れちゃう。
だからそれをしないようにある程度、この幅が少なくなってきたら今度は先端を研ぐように、先端を研ぐように。
そうすると極端な話するとこういうペティナイフなんかがほんとにカービングナイフぐらいになるまで使えるんですよね。

だからもう後は本当に研ぎ方にもよるし、いろいろあるんだよね。
何とも言えないんですけれども 。




ステンレスは人造、鋼は天然仕上げ砥石のほうが艶が出る。

研ぎ忠 岡田忠志 包丁談義

これやっぱり100円のものに見えないですね。
何か包丁がやっぱり違うよね。
オーラが出てきてる。

それは、1万円の包丁でも、1000円の包丁でも、やっぱり研いだ瞬間ってのは切れる状態になってるから全然違いますよ。それは。
それは違いますよ。明確に。

よいしょ。

それで同じって言われたんじゃ価値がないじゃない。
そう、それでステンレス合金なんかの場合は人造の仕上げ砥石の方が艶が出るんですよ。
鋼とかね、そういう場合は天然の方が艶が出るけど。
おかしいんだよ。
何回やってもそう。

じゃあ天然にこだわらなくてもいいんじゃないんですか。

うん。天然じゃなくても切れるは切れるんだけれども、鋼の包丁の場合は、いい包丁の場合は天然で仕上げてあげた方が全然艶が違う。
切れ味は同じだけどね。艶が違う。
それは明確に言えるんだよね。

さあ仕舞うんだったら仕舞いますか。

全然、周りがびちゃびちゃにならないんですね。
もっと、水が跳ねて周りが汚れるのかと思ってました。

いや、そんなことないよ。
ここだけですよ。
そんなにびちゃびちゃしたんじゃ。

汚れると思ったからコンテナを持ってきたんですが。

使わない。使わない。
何のために持ってきたんだろうって思ったよ。
ブルーシート一つあれば、全然汚れないよ。

じゃあ悪いけど帰りますわ。
洗濯物取り込まなきゃいけないんで。

お疲れ様でした。
ありがとうございました。

こっちこそ本当にお世話になりました。
岡田のホームページのために。ありがとうございました。